Angelic High School 第1話

覚えていますか?

学園にいた天使の事を…

覚えていますか?

貴方の傍に居続けた仲間達の事を…

覚えていますか?

かけがえのない思い出を…

どうか忘れないで

貴方の隣にいた小さな天使を―――

 

2010年春、私 村上真紅は新しい生活を送る――

関西にある実家を出て、1人暮らしをする為に、

ガタンゴトンと電車に揺られ、私は1人、上京している。

「まもなく~翔栄町~翔栄町です。」

アナウンスが流れ、うとうとしていた私は目を開ける。

そして窓の外を見ると、そこには新しい世界が広がっていた。

初めて見る世界、初めて見る街、初めての1人暮らし

「ここが、翔栄町か」

私はポツリと呟き、新たな生活に期待と不安を抱いていた。

今日から私は、高校生になるんだ。

中学生とは違い、もう大人なんだ、

1人暮らしして社会の勉強もしなきゃ。

「…よし!」

私は気合いを入れ、荷物を背負う。

今日から私の新しい生活が始まる―――

 

 第1話「はじめての1人暮らし/まさかの共同生活!?」

 

翔栄駅にたどり着いた私は、

改札口を出て携帯電話を取りだした。

慣れた手つきで操作し、電話をする。

電話の相手は私の姉、村上麻衣だ。

挿絵その1

「もしもし?姉さん?私、真紅だけど…」

 (あぁ、真紅、もう着いたの?)

「うん、今着いたよ。」

 (そう、今日から1人暮らしだけど、本当に大丈夫なの?)

「うん・・・大丈夫、まだ不安はあるけど、1人でやってみせるから」

(そっか、まぁアンタが決めた事だから口出ししないけど

無理はしないでね、いつでも私達に相談するのよ?)

「わかってるって、じゃあそろそろ行くから

荷解きが終わったらまた連絡するね」

(わかった、頑張ってね真紅)

「うん、ありがとう、姉さん。」

通話が終わると、私は携帯をポケットの中に仕舞い

荷物を背負い、歩き出す。

人ごみの中を歩き続け、ある場所へと向かっていた。

その場所というのは、ステーションビルというマンションだ。

そこが、私の新しい居住区になる。

歩き続けること数分、ようやくステーションビルが見えてきた。

挿絵その2

「ここが、ステーションビルか…」

駅から数分の場所にあるこのマンション

1人暮らしをするには贅沢すぎるこの居住区に

今日から住む事になるんだ。

 

 

1人暮らしをしようと思い立ったのは2ヶ月前

実家を離れ、自活しようと思い立った私は

家族と相談し合い、そして1人暮らしを決めた。

その後、不動産に行き、学生でも安い賃金で入れる家を探した。

最初はなかなか見つからなかったけど

不動産屋のおじさんが最後に紹介してくれたのが

このステーションビルだった。

「駅から徒歩数分、2LDK 家賃1000チケット

初回は3000チケットで高かったけど

中学の時にバイトしてコツコツ貯めたお金で何とかなったし

今日から1人暮らししながら高校に通うんだ。

親もいない、兄妹もいない、憧れの1人暮らし・・・

よーし、頑張るぞ!」

私はそう意気込み、ステーションビルの中へ入っていった。

そして管理人さんに挨拶をして鍵を貰った。

私が住む部屋は「9-08870号室」

つまり9階にあるという訳だ。

エレベーターを降り、指定された部屋へ向かう。

「…ここね」

鍵を開け、中へ入ると部屋の中は真っ暗だった。

まぁ今まで誰もいなかった訳だし、真っ暗なのは当然か

えーっと・・・スイッチは~・・・

そう思いながらスイッチを探していると

 「すみません、懐中電灯取ってもらえます?」

 と声がした。

私は「え?」と疑問を抱きながらも

傍に落ちていた懐中電灯を拾い、すぐに渡した。

「これ?」

「あ、それですそれです、ありがとうございます^^」

「いえいえ、どういたしまして……んん??」

そこで初めて疑問が確信に変わった。

あれ?おかしいな?と

私1人しかいないハズなのに何で声がするんだろう?

そう思いながら目を凝らしていると

懐中電灯を持って作業している少女がいた。

「ダメですね、完全に電源がイカれてますね」

そう言って溜息を吐く少女

するとリビングにいた男の声が聞こえてくる。

ってまだ誰かいたの!?!?

「マジかよ、夜までに何とかしないと真っ暗で何も見えなくなるぞ?」

「そうッスね、何とかしないとマズイッスよね~」

「まぁ、その辺は大丈夫ですよ、この右代宮楼座にお任せあれ~っと」

 カチャカチャと何を弄って修理してる少女

私はそんな光景をただ見ている事しか出来なかった。

と言うか今楼座って言った?楼座ってまさか…

しばらくすると真っ暗だった明りが付き、部屋が明るくなった。

「お、ついたついた、助かったぜ楼座」

「ふふん、ざっとこんなもんですよw」

「これでやっと生活できますね!」

「……。」

沈黙…。

明りが付いた後、すぐに理解した。

この部屋には私の他にも3人の男女がいる事に

1人は右代宮楼座、電気系統を修理していた

そしてもう1人は右代宮留弗夫、楼座の兄だ。

そして矢吹真吾、中学時代からの後輩…だったのだけど

「…。」

「…。」

「…。」

長い沈黙が続く、

3人共私の存在に気付いたようだ。

どれくらい沈黙が続いただろうか

最初に口を開いたのは留弗夫からだった。

「よ、よぉ…真紅じゃねぇか」 

「奇遇ッスね~^^;」

「あはは、真紅姉ぇも…引っ越しですか??」

「え、ええ…まぁ…って何でアンタ達がいるのよ!?」

 挿絵その3

 この部屋は私の部屋で、1人暮らしする予定だったはず

なのにどうして留弗夫達がここにいるのか

私はその疑問をぶつけた。

すると留弗夫はバツが悪そうに答えた。

「じ、実はな、不動産屋のオッサンが詐欺師でよ」

 詐欺師??

「俺達も…騙されたんですよ、ははは…。」

 騙された???

「あのオジサン、私達の高額な金でここに紹介した割には

手入れが一切されてなくてですねー

そんなボロい部屋に私達を住まわせようとしたんですよ」

えーっと…つまり???

「「「今日からお世話になります!」」」

「はぁああぁぁ~~~!?」

突如として始まった私達4人の共同生活

1人暮らしをするつもりが、

何故か共同生活する事になってしまった。

何故?どうして?私の1人暮らしの夢が…

いとも簡単に崩れ去ってしまった。

「な、なんでこうなるのよ――――っ!!><」

 

こうして私達の奇妙な共同生活が始まる―――。

 

……

………

 

ドサッと荷物を置くと、私は深い溜息を吐いた。

「ふぅー、これであらかた荷物は片付いたわね」

あれから1時間弱、私達4人は荷物の荷解きを済ませていた。

不動産屋のオジサンに騙された私達4人は

結局、共同生活をする事になってしまった。

不安や不満が多々あるけれど

文句を言ってても始まらない。

と言うか文句を言える状態じゃなかったというべきか

「それにしても…。」

まさかあのオジサンが詐欺師だったなんて…

まったく手入れのされていないボロい部屋を高額で紹介し

しかも理不尽な契約書までサインさせられていた。

その所為で私達4人は、高校卒業するまでは

このマンションから出ていく事は出来ないらしい。

卒業せずに退去する場合は

5000万チケットを払わなければならないらしい。

そんな大金、払える訳がない。

「はぁ…夢の1人暮らし生活が~」

私は落胆しつつ、布団に寝転がる。

2LDKの狭い部屋に4人で共同生活

1つの部屋に私達4人で寝る事になる訳だ。

「なんでこんな事になるのよ…はぁ~」

「文句を言ってても始まらねぇだろ。

せっかくだし、共同生活を楽しもうぜ。」

「アンタは暢気でいいわね~」

留弗夫に悪態を吐きつつ、これからの事を考えていた。

不本意とはいえ、これから3年間共同生活をしなければならない。

本当に共同生活が出来るのか不安が残るが

留弗夫の言う通り、文句を言ってても始まらない。

卒業まで頑張るしかなかった。

「でもそうね、ウダウダ言ってても始まらないし

気持ち切り替えようか…」

そう言って体を起こすと、

私は留弗夫達に疑問をぶつけた。

「そういえば、アンタ達は何で人暮らしをしようと思ったの?」

「え?あー…そうだなぁ…」

「まぁ、私と兄さんは…家庭の事情で家に居づらくて^^;」

家庭の事情、そういえば留弗夫と楼座の家は

私みたいな一般の家庭とは違って特別だった。

と言うのも右代宮家は超が付くほどの豪邸で

莫大なお金を持っている財閥だ。

右代宮財閥といえば、日本一有名な財閥だった。

右代宮家当主右代宮金蔵(留弗夫達の父親)は

教育に厳しい父親だったらしく

スパルタ教育で、厳しく育てられたらしい。

さらに留弗夫や楼座の兄と姉、

蔵臼さんと絵羽さんからも同じように厳しく育てられ、

辛い日々を送っていたらしい。

まぁそれが原因で留弗夫は中学時代、荒れていた。

楼座は周りの空気に合わせつつも、苦しい日々を送っていた。

だからそんな生活が嫌で、2人は自活したと言う所か

「なるほどね、真吾くんはどうして1人暮らしを?」

「俺ッスか?俺はその、

1人暮らししたら気ままでいいだろうなーと思って・・・

実家にいると居心地が悪いんですよね~

母親はよく『お隣の○○さんが結婚するんですって!』とか

『アンタも彼女とか作りなさいよね~』とか

プレッシャーかけられるんですよ

それに妹がいるんですけど、妹が反抗期でよく喧嘩するんですよ

そんな生活が嫌で、1人暮らしをしようかと^^;」

「あーわかるわかる、母親っていつも

そうやってプレッシャーかけてくるよな~

しかも妹まで反抗期か、心中察するぜ

でも妹が腐女子じゃないだけマシだと思うぜ?」

「なんで私を見ながら言うんですか、兄さん。」

「お前いつもホモホモ言って同人誌書いてんじゃねぇか」

「いいじゃないですか!ホモ同人誌書いて何が悪いんです?!

ホモが嫌いな女子なんていません!!ですよね真紅姉!」

「いや、私に同意求めないでよ、そう言うのは聡美に言って;」

「ぐぬぬ、真紅姉もいつかわかる日が来ますよ

BLの素晴らしさを!!801萌え~!」

「まぁ、こんな妹だが、よろしくしてやってくれ」

「あはは…相変わらずね楼座は^^;」

 挿絵その4

 

とまぁこんな感じで他愛のない雑談をしていた私達

他にも共同生活する上でのルールを取り決めたりと

話の種は尽きなかった。

そして気が付けばあっと言う間に時間が過ぎていき

外はすっかり夕暮れになっていった。

 「あ、もうこんな時間か、そろそろ晩御飯でも作ろうか」

「ですね、せっかくですし、引っ越し蕎麦でも食べます?」

「そうだな」

「いいですね、ちょうど腹減ってきましたよw」

「んじゃ、軽く作ってくるわ」

そう言って私と楼座は立ち上がり、台所へと向かう。

ここに来るまでに材料も買ってあったし

何とかなるだろう。

 

……

………

 

それからしばらくして、

私と楼座で作った引っ越し蕎麦が完成した。

完成した蕎麦を持って部屋に行くと

既に留弗夫と真吾くんの2人がテーブルの前で待機していた。

「おまたせ~」

「おう、遅かったな。」

「はぁ~腹減った~」

「今日はたくさん作りましたからねw

おかわりも自由ですよw」 

そう言って楼座は私達が作った引っ越し蕎麦の他に

軽く作った手料理を振る舞っていた。

「おー美味そうッスね~♪」

「「「いただきまーす」」」

 

ずずずっ←蕎麦を啜る音

 

「!」

「!?」

「こ、これは…っ!?」

蕎麦を啜り始めた瞬間

留弗夫と真吾くん、そして楼座の顔色が変わった。

私はキョトンとしながら蕎麦を美味しそうに食べていたんだけど

「こ、これ…真紅が作ったのか??」

留弗夫はそう問いかける。

私は「ええ、そうよ。」と答えた。

私は蕎麦だけを作り、楼座は他の手料理を作っていた。

でもそれがどうかしたんだろうか??

「(わ、忘れてたぜ…)」

「(完全に忘れてたッス)」

「(真紅姉の料理は…)」

 

「「「(この世に存在してはいけない料理だと

言う事を…ッ!)」」」

 

※説明しよう!

村上真紅の作る料理は通称

「この世に存在してはいけない料理」と呼ばれており

例えどんなに最高の食材を使用したとしても

出来上がりは酷く歪な食べ物になってしまうのだ!

少し焦げたとか、塩と砂糖を間違えたとかそんなレベルじゃない

まさに悪魔とて逃げだすほどの破壊力を持っている。

そんな料理を一口食せば最後、

その破壊力に打ちのめされてしまうだろう。※

 

「……?」

「(し、しかも本人は気付いてねぇ…だと!?)」

「(確か真紅姉って味覚音痴でしたよね?)」

「(味覚音痴ならではの特製料理…こいつぁ危険すぎるッス!)」

「(今まで真紅姉はどうやって食事してきたんですか?!)」

「(た、確か聡美が家事全般をしていたハズだが…)」

「(という事は、聡美さんがいない今、

料理担当は真紅さんか楼座さんの2人しかいないことに)」

「(しかし、俺達の胃袋の損傷を回避するには…っ!!)」

「(料理担当は楼座さんしかいないッスね…)」

「(そうなりますよねー…はぁ~)」

「みんなどうしたの?食べないの?」

「い、いや…その…」

「遠慮しないでどんどん食べなさい、

明後日から高校生活が始まるんだから、

今のうちに食べて活力を作らないとね」

「そ、そう…だな…

(とりあえず蕎麦以外のモノを食べて口直ししねぇと)」

「(この場を乗り切るにはそれしかないですね)」

「(でも、真紅姉の作った蕎麦も食べないと…)」

「(だよな…俺達胃、持つのかな?)」

「(なーんかさっきからみんな変ね?どうしたのかしら?)」

「(仕方ねぇ、覚悟決めようぜ)」

「(う、ウッス!どこまでも着いていきます!)」

「(入居初日からこんな試練に巻き込まれるなんて…)」

「(男、右代宮留弗夫!行くぜ!)」

「(矢吹真吾!行きまぁぁあす!!)」

「(ええぃ、もうやけ食いじゃ―――っ!!)」

ずずずっ←蕎麦を啜る音

……

………

ガタン!←撃沈した音

「ちょっ、なんで急に倒れるのよ3人共?!

ねぇ―――ちょっと―――!?」

とまぁこんな感じで夕食を済ましていく私達

食べ終わる頃には、留弗夫達はぐったりしていたけど

大丈夫かしら?まぁいいか

 

そんなこんなで気が付けばもう夜も更け

私達は期待と不安を抱きながら、夜を過ごす。

「ふぅ――」

 明後日からは、私達はいよいよ高校生になる。

私と留弗夫は翔愛学園に

真吾くんと楼座は翔愛学園中等部に編入になるらしい。

「いよいよ高校生…か」

つい最近まで中学生で、まだまだ子供だったのに

気が付けばもう高校生か

世間一般ではまだ子供かもしれないけど

中学生と高校生はやっぱり違うものだ。

義務教育じゃなくなるし、いつまでも子供じゃいられない。

「明後日から高校生、卒業まで頑張らないとね!」

その為にも、ウダウダ悩んでても始まらない。

来る高校生活を満喫する為にも、頑張るぞー!

「おやすみなさい」

私はぐったりしている留弗夫達にそう言うと、

明後日に備えて眠る事にした。

こうして夜は…更けていく――

 

To be continued

 

次回予告!

ついに入学式の日がやってきた。

真紅と留弗夫の2人は翔愛学園へと向かい、高校生活を始める

しかし、その学園生活は、真紅の期待通りの学園生活などではなかった

熱血的な担任と個性的な新クラス!ネコミミを付けた売り子のいる購買部!?

そして部活騒動に熱血教師との熱い剣道バトル?!

学園に存在する天使まで登場し、翻弄される真紅達

そんな波乱万丈な学園生活が今、幕を開ける―――

次回Angelic High School 

第2話「今日から高校生!/高校生はタイヘンです!」お楽しみに!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です